事業再生における財務デューデリジェンス(財務DD)とは
経営が厳しい企業が事業再生を検討する際には、正確な財務状況の把握が欠かせません。
そのために行われるのが財務デューデリジェンス(財務DD)です。
今回は、事業再生における財務DDの目的や内容を見ていきます。
財務DDとは
財務DDとは、企業の財務状態や収益性、資金繰りの状況などを詳細に調査・分析する手続きです。
M&Aや投資の場面でも用いられますが、事業再生では再建計画の実現性を判断するために行われます。
事業再生における財務DDは、単に数字を確認するだけでなく、再生可能性を見極める役割があります。
結果は、債権者や投資家、再生計画の策定担当者にとって重要な判断材料です。
財務DDで確認する主な項目
事業再生における財務DDでは、以下のような項目が確認されます。
実質債務超過
実質債務超過とは、資産を時価評価したうえで、負債が資産を上回っている状態です。
貸借対照表上は黒字にみえても、不良資産や過大評価された資産を差し引くと債務超過になる場合があります。
事業再生では、実質的な債務超過額を把握し、債務整理や資本増強の必要性を検討します。
正常収益力
正常収益力は、一時的な要因や異常値を除き、企業が安定的に稼ぎ出せる利益水準を示します。
過去数年分の損益計算書を分析し、特別利益や特別損失を除外して算出します。
事業再生では、正常収益力が再生計画の実行可能性を判断する基準となります。
また、M&Aにおいても重要視される分析項目です。
フリー・キャッシュ・フロー(FCF)
フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によって得られた資金から設備投資などの必要資金を差し引いた、自由に使える資金です。
再生企業が債務返済や運転資金にどの程度充てられるかを把握するために重要です。
FCFが安定してプラスであれば、事業再生の可能性は高まります。
過剰債務
過剰債務とは、正常収益力やキャッシュフローからみて、返済負担が過大になっている状態です。
返済額が企業の資金力を超えている場合、事業継続が困難になります。
財務DDでは、過剰債務の有無とその規模を明らかにし、債務圧縮や返済条件変更の必要性を検討します。
財務DDの実施プロセス
事業再生における財務DDは、以下の流れで行われます。
①調査範囲と目的の確認
②必要資料(決算書、試算表、契約書、債務明細など)の収集
③各財務数値の検証・分析
④リスク要因や改善余地の特定
⑤報告書の作成と再生計画への反映
粉飾決算や簿外債務などがある場合は、早期に発見し、是正措置を取ることが重要です。
まとめ
事業再生における財務DDは、企業の現状把握と再生可能性の評価に欠かせない調査です。
資産・負債・収益構造・資金繰りを正確に把握し、リスクや改善余地を洗い出すのが重要です。
事業再生に関して不明点があれば、税理士などの専門家への相談も検討してください。